年明け前まではどうやら暖冬らしいと言われていて。
雪が降らなくてスキー場はどこも開店休業状態。
それでなくとも不景気とスキー離れとで経営が大変な民宿は、
どうやって乗り切ろうかと青色吐息とかニュースで取り上げられてたけれど。
「うあ。ゾロゾロ、ほら、雪が降ってんぞ?」
小さなルフィ奥様が、
朝 お目覚めして、まず最初にすることは。
いい匂いのする旦那様の懐ろに、さんざ頬擦りしての甘え倒してから、
気が済むとやっとのことベッドから飛び出すと、
寝室の大窓のカーテンを思い切り引き開ける…なのだが。
ここんところはそれと同時、
たいそう冷たい空気がじわ〜〜〜っと滲んで来るのを覚悟していたものが。
今朝は窓ガラスがやけに白っぽくて。
そうまで曇っていてのことだろかと、
ひやりとするガラスをそれでも掌できゅきゅっと拭ったところが、
外には結構な大きさの雪片が舞っており。
「休みでよかったな。
こんな日って車出すとエンコするからって電車も混むんだろ?」
「あ〜〜〜。まあな〜。」
雪って困りもんだよなとか、
大人の生活のリズムを崩して邪魔ばかりしてとか、さも厄介そうに言うけれど、
“本当は好きなくせによ…。”
二人の故郷は仙台で、
北海道や東北のドカ雪に比すればささやかながら、
それでも都心とは比べものにならない頻度で雪が身近な存在だった。
大人たちのみならず、子供たちだって ある程度まで長じれば、
雪が降るのが憂鬱になりもした。
グラウンドが埋まるので、球技はほとんど出来なくなるし、
外出時にはあれこれ着込んでむくむくになる必要があるのが億劫だったし。
雪かき雪下ろしという日課が増えて、
「あと、夏休みが微妙に短くなる。」
「? そうだったか?」
ゾロは剣道中心の生活だったから、
気がつかなかったかもしんないけどさと。
人を随分な朴念仁だったように言うルフィだが、
「冬は冬で、随分と楽しそうにしてたじゃねぇか。」
「まあな♪」
にししとご機嫌そうに笑うから、
人のことばっか鈍感だったような言い方をすんなという、
つまりは意趣返しだったことにも気づかれてない様子であり、
“まあ、そこは別に良いんだが。”
なあなあ覚えてっか?
? 何をだ。
「ゾロってば雪であれこれ景色が変わったってって、
ウチへ来るのに何度も迷子になってたろ?」
うっせぇよ。////////(←あ)
「お前こそ、雪かきの雪を集めてたとこに嵌まっちまって、
誰も見てなかったもんだから、
そのまま1時間も見つけてもらえなかったって武勇伝があるくせに。」
おうさ、ケータイがないくらい昔だったからなぁ♪
だから…喜ぶ話じゃねぇだろ、それ。
うん。町ん中で遭難するとは思わなかったなぁ。
曇ったガラスを扇形に拭った後が、
淡彩の虹みたいな形になって刳り貫かれ。
そこをよぎる雪の影が、ふわりふわりと何だかやさしい。
朝日の角度が変わったか、
中には金色に染まっているのもあるものだから、
そういうのへ気づくとそこから振り返って来て、
そりゃあ嬉しい発見を“ほらほら”と指さして示す君ではあるが、
「寒くねぇのか?」
暗に“こっちへ戻っといで”と声をかければ、
思い出したように足踏みをして、
寒みぃ〜〜っと駆け戻って来る稚さよ。
「わ、こら冷てぇ。」
「だってガラス触ったし。」
「そっちじゃねぇよ、足だ足。」
いきなり温度差の大きな“ひやり”が触れたの、
いやだったか?ごめんと引っ込めかかるの捕まえて、
小さな全身を懐深くへと掻い込みなおすゾロであり。
「お前、平熱高いんだから、それだと人より寒いの堪えんじゃね?」
「?? そんなこともねぇけどな。」
変な理屈だとキョトリとする、
潤みの強い大きな瞳にも雪の舞いは映り込み、
「?? ぞろ…?」
何か言いかけたのごと、やわらかい口許をそおと吸えば、
小さな肢体が ふにゃいと蕩ける。
ああホントだな。今日が休みでよかったよかった。
…………ぞろのすけべえ。//////////
〜Fine〜 09.01.13.
*な〜んやコレにも程がありますね、すいません。(笑)
都心でも、積もるとこまではいかなんだけれど、
それでも結構な雪模様だったそうで。
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